分煙室
THE ROAD TO“SMOKE FREE”
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《煙と袂を分かつことになった経過を――幾ばくかの逡巡を経て――2004年春、ここに白状》
 
□■The reason to RELEASE■□
やめた理由を質問される。
やめ方を質問される。
もう本当にやめたように思われる。
誰かしらの役には立つかも知れない。
 
□■before DATE■□
1987年頃から喫煙が習慣化し、1日平均して1箱少々。
“1箱に抑える”という意識はあったが守れたことは少ない。
2002年1月までの約15年の喫煙歴。
興味に任せて、パイプ・葉巻もやってみた。一時期は両切りばかり吸ってたなぁ。
愛飲銘柄は、ラッキーストライク・キャメル・マルボロ・ケントマイルド・
ハイライト・ホープ(これは2箱で1箱と数えさせてぇ)等々、辛めのものを好む。
“休煙”は15年で2回ほど。それぞれ6〜9ヶ月継続。
 
□■Dec.'01〜 READINESS■□
◇大事◇
◇これだけ揃えば誰でもやめる◇
あまりおいしいと思わなくなってきた。
惰性で吸っているのではないかという疑問がわいてきた。
心地よくタバコを楽しめる場所が激減したことに気づいた。
タバコを吸うために仕事・思考を中断せざるを得なくなってきた。
席での仕事中に次の喫煙のことを思い、席を外しての喫煙中に仕事のことを考えている。
タバコを吸うのに言い訳をしていることが多い。
蓄積された強烈なタバコ臭(年輩の方に多い)に出会い、自身の将来を想像した。
大笑いしている自身のスナップ写真の前歯が茶色かった。
タバコを吸う自身の姿は以前ほどかっこよくないかも。
お金がもったいなくなってきた。また値上がりするらしいし…。
出先では無意識にタバコの自販機を確認している。
5,000mを25分以内で走りたい。
1,000mを25分以内で泳ぎたい。
何か変えよっかなぁ…。
妻が喘息(以前からわかってただろ!)
◇以上なるべく期間を集中して実感すべし◇
 
□■Program START■□
人は“投資”をすると“回収”せねば気が済まなくなる。
資本金“0”の事業はうまくいかなくてもなんともない。
が、
資本を投入したからには利益とまではいかずとも、投資分は回収したい。
これまでの“休煙”は、資本金“0”の事業である。
この度は、“お金をかけてタバコをやめる”こととする。
《JR東京総合病院〈新宿〉禁煙外来》
 
医療機関で“断煙”する…。
そう思い立ってから、通院が可能で、清潔そうで、信頼できそうな病院を探したらここになった。
手許の記録によると、2001年12月26日に第1回目の予約を入れている。
ちなみに、この医療機関での“断煙”とは、喫煙を“病気”と捉え、
医師から薬やアドバイスを処方してもらうことである。
“病気”なんだから直さねばなるまい。“病気”なんだけども、その治療には保険がきかないのが難点だけどね(2001年当時)。
担当くださったのは、当院の石井周一医師(内分泌内科)。温和な感じの人。彼の談。
「喫煙は常にニコチンを補給し続けないと普通に生活できない病気である。
容易にやめられない原因は“習慣依存”と“ニコチン依存”の2点。
それぞれ“行動置き換え療法”“ニコチン置き換え療法”での治療を行う。」…ホホゥ。
「“行動置き換え療法”とは、喫煙行為を別のことに置き換えて気持ちを制御する方法。
“ニコチン置き換え療法”はニコチンを“喫煙”以外の方法で摂取する方法。
そもそも、タバコの害はタールと一酸化炭素によるものであり、
ニコチン自体は中毒性はあるもののたいした害はない。
ただ、その中毒性のあるニコチンを摂取したいがために、
タールや一酸化炭素などの有害物質をも摂取してしまっているわけである。」…フムフム。
「そして、“喫煙”以外のニコチン摂取法というのが“ニコチン貼付薬”である。」
…すばらしい薬品がこの世の中には存在する。
問診を受け、一酸化炭素量を計られ、タバコの害など禁煙のための動機付けの講義を受ける。
まぁ、この講義内容については…わかってます…といった内容であったので大した感銘も受けない。
同時に受講(受診?)していた隣の席のおじさんが、わざとらしく頷いていたのが気になった。
さて、問診・一酸化炭素量の測定結果から、私の禁煙プログラムは“ニコチン貼付薬”と決定。
ここ一ヶ月喫煙量が減っていたこともあり、“重症”ではないらしい。
“重症”だと、ニコチンガムも併用するとのこと。
3ヶ月くらいでプログラムが終わり“断煙”が確認されると、ちゃらい“断煙認定証”が発行される。
見本をちらつかされて、これを目指して頑張って…などと言われるが、そんなものは要らない、と思う。
待合室の壁には、禁煙を遂げた人からの喜びの声として手紙などが掲示されていて、
なんだか興ざめである(アマノジャクかな)。そんな中で最も関心を引いたのが、
一年近く禁煙を続けていたのにふとしたことからまた吸い始めてしまった人の手紙。
後悔・懺悔・自己嫌悪の念に満ちていて、とてつもなく暗い内容の手紙であった。
こんなに肩を落として手紙を書いてくるようなら吸わなきゃいいのに…と、心の底から思ったことだ。
そんなわけで始まった私の“断煙”の“治療”。
当時の記録・日記類から当プログラムに関わる記事を抜粋して以下に転載する(青文字は今回補訂)。
2002年1月15日(火) 有給休暇をとって14:00〜JR東京総合病院禁煙外来へ。タバコの害等を説明されて、ニコチンパッチを購入。帰路、新御茶ノ水のドトールで最後の喫煙。数本残っていたが捨ててきてしまった。夜から禁煙パッチなるものを貼る。果たして本当にタバコをやめられるのか。
◇最後にタバコを吸ったのが新御茶ノ水のあのドトールだったとは忘れていた。最後に吸ったのはラッキーストライクだったな。初めて吸ったのと同じ銘柄だ。病院については半信半疑だったことがよく分かる。新宿で迷ったんだよな、確か。パッチを貼ったまま泳げるかという質問をしたら、一瞬返答に詰まっていたっけ。
診察料・投薬(ニコチネルTTS30を2週間分)料 計10,580円
 
2002年1月16日(水) 禁煙。パッチのためか、不思議にタバコを吸いたいとも思わず1日を終える。ただ、何となく口さみしいことはある。
◇仕事も確か、忙しかった頃だったと思う。タバコを吸うために仕事を中断する必要がなかったのを不思議に感じたのを覚えている。
 
2002年1月17日(木) 禁煙は続く。〈略〉タバコのない生活は、わりと煩わしさがなくてよろしい。
◇朝とか、財布と鍵さえもてばいいわけよ。これはシンプルになったと思ったね。
 
2002年1月22日(火) 禁煙続行中。
◇とある研究会での発表準備に追われていた頃。かつてはタバコをくわえて呻っていたものだったが…。タバコと調べごととの間に相関関係はないことを実感。
 
2002年1月26日(土) 〔研究会での発表の日。夜の部完備…〕飲みの席でもタバコを吸いたいとは思わなかった。不思議な薬である。
◇お酒の席になると、つい手が伸びてしまうんじゃぁないかと不安を感じていたのだが、あっさり平気だった。恐るべしニコチンパッチ。
 
2002年1月29日(火) 有給休暇。午後JR東京総合病院へ。禁煙はずっと続いている。経過良好ということで、パッチのサイズが予定より早く一まわり小さくなった。そういえば本当にタバコのことを考えなくなった。
◇つらいことがあるかと聞かれたので、「新宿まで来るのがつらい」と答えたら、規定の2週間分より多めの3週間分のニコチンパッチを処方してもらえた。何事も言ってみるものである。
診察料・投薬(ニコチネルTTS10を3週間分)料 計12,710円
 
2002年2月19日(火) 〔当日予定の変更が生じた〕せっかく禁煙外来を変更してもらったのに。とは言ってももう通院するつもりはない。すっかりタバコをやめてしまった。
◇気づけばパッチも貼り忘れているくらいタバコ、あるいはニコチンと疎遠になった。
 
2002年12月31日(火) 〔年末の所感〕タバコをやめた。ワールドカップがあった。
◇いま読みかえすと、なんといういい加減な“年末の所感”…。2月19日以来、タバコに関する記載がなかったのにも驚いた。
 
2003年1月15日(水) 床屋へ行ったら格闘家のようにされた。タバコをやめて1年。松井がニューヨークヤンキースに入団。背番号55。ニューヨーカーには好感を持って受け入れられている様子。
こんな感じで私はタバコと袂を分かった。
苦しい禁断症状も特になかった。
通院や投薬は単なるきっかけであって(もちろん大いに助けられたのだろうけれど)、
吸い続ける理由より吸い続けない理由の方が多くなっていたというのが本当のところか。
もう1回通院しなければならなかったのだけれど、電話で状況を報告し、
“もうやめたみたいだからそちらへは伺いません”と告げて病院ともそれっきりだ。
“断煙認定証”も発行されずじまいとなったし、事後の経過を報告するレターセットも入手できなかった。
…おかげで感涙に咽ぶ感謝の手紙が掲示されることもなくなった…
投資額は23,290円(交通費含まず)。3〜4ヶ月分のタバコ代であった。
手許には、使用期限“2003.02”とプリントされたニコチネルTTS10が3枚残っている。
 
□■Success EXPERIENCE■□
◇成功体験はとても大事◇
1,000mを25分以内で余裕で泳げる。
5,000mを25分以内で走るのは相変わらずつらい。
試みに毎日2〜3枚の硬貨を空き缶に投入してみていたら、
半年もしないうちに妻にプレゼントを買うことができた。
車のフロントガラス(内側)を拭いても汚れていなかった。
妻の喘息がほとんど起こらない。
(それまでも部屋の中では吸わないようにしてたのだけどねぇ)
 
□■PENALTY■□
◇‘飴’があれば‘鞭’もある◇
投資額の半額を補助金として妻から提供を受けている。
が、
“再び吸い始めた場合、倍額を返済すべし”とのこと。
こわいこわい。
 
□■Present DAY■□
スターバックスでお茶を飲むことが増えた。
タバコのにおいが分かる。
ドトールのコーヒーは好きなのだけれど、昨今店内の煙の濃度が高すぎないか?
煙を拒絶するほどでもない。
日常生活が簡単。
出掛けに“タバコは?”“ライターは?”と騒がない。
タバコの自販機前を気づかずに通過している。
とくに困ることがない。
 
□■FUTURE■□
またいつか始めるかも知れないけれど、当分の間は要らないかな。
じいさんになって隠居したらパイプでもやろっかな。
 
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